2011年8月3日水曜日

すべての牛肉が安全なのに、消費者の不安をあおるのは?

内閣府食品安全委員会は、放射性物質の食品健康影響評価について、7月26日の第9回「放射性物質の食品健康影響評価に関するワーキンググループ」において、評価書案をとりまとめました。
⇒詳細はこちら

現在(7月29日~8月27日)、国民の皆様からの御意見・情報の募集(パブリックコメント)を行っており、今後、このパブリックコメントを検討したうえで食品安全委員会において評価書案を確定し、厚生労働省へ評価結果を通知する予定です。

食品安全委員会が今回くだした評価の結論は、山崎が6月26日のシンポジウムで述べたものとほぼ同様の内容でした

すなわち、100ミリシーベルト以下の放射線量では人体への健康影響が起こるという証拠はない、ということです。

食品安全委員会ワーキンググループの評価書案は200ページ以上にわたる膨大な報告書ですが、小泉委員長のメッセージは比較的簡潔に今回の評価結果をまとめてありますので、正確な表現を参照したい方はご確認ください。 ⇒小泉委員長のメッセージ

ワーキンググループは大学の先生方(研究者)の集まりですので、特徴としてはっきりしたデータがない場合に、「その可能性が否定できない」というようなあいまいな表現をされる場合が多いのが問題です。これが消費者の不安をあおってしまいます。

特に今回の評価書の中でも慎重なコメントが多すぎるため、「安全なのか危険なのかどっちなんだ?」という表現が散見されますが、これは忌々しきことです。

たとえば、「小児に関しては、甲状腺がんや白血病といった点でより影響を受けやすい可能性がある」との表現がありますが、結局100ミリシーベルト以下の放射線量が危ないとは述べていません。 それもそのはず・・ そのようなエビデンスはないからです。

生涯100ミリシーベルトの放射線量というのは、どのくらいの量でしょうか?


現在、厚生労働省が暫定規制値として設定している500ベクレル/kgの放射性セシウムが検出された牛肉100g(0.0007ミリシーベルト)を24年間毎日食べ続けた量に相当するそうです。

それは何を意味するかというと、国が定めている規制値(500ベクレル/kg)があまりにも低すぎるということです。 安全なはずの牛肉まで放射線量が多いという判定で出荷停止にしてしまうから、食の安心が脅かされているのです。

牛肉に関して食の不安をあおっている主な原因は以下の4つでしょう:

・低すぎる暫定規制値(早く上方修正を! 行政官庁は「保身」を捨ててサイエンスで判断すべし)
・「出荷停止」(安全なはずの食品を出荷停止するのは明らかに人災。即刻解除すべし。)
・「全頭検査」(行政レベルも小売店レベルも同様;「自分だけ安全」は抜け駆け行為。「すべての牛肉が実は安全」をつらぬくことが全体最適で風評被害を防止する)
・これらを大袈裟に報道するマスメディア(特に不安がっている消費者にインタビューする報道はやらせメールとレベルが同じ。実際はすべての牛肉が科学的に安全なのだから安心すべしと伝えるべき)

風評被害は牛肉だけにとどまりません。
このままだと間違いなく、次は「コメ」に飛び火します。

早く上記の原因4つを治療しなければ、
フード・インフォマフィラキシー(食品情報過敏症)の患者さんはもっと世の中に増え続けるでしょう。



K

2011年7月13日水曜日

牛肉の放射能汚染は心配無用。 全頭検査不要。

福島県南相馬市産の牛肉から国の暫定規制値を越える放射性セシウムが検出された問題が報道されている。
南相馬市の6頭の牛からとられた牛肉は、首都圏の食肉業者を通じて全国8県および首都圏に流通しており、すでにその牛肉を食した消費者もいる可能性が高いとのことで、衝撃が走った・・

今回発覚した放射能汚染肉だが、最高で暫定規制値の7倍にのぼる放射性セシウムが検出されたと報道されている。現在厚生労働省が発表している飲食物中の放射性セシウム暫定規制値は500ベクレル/kgなので、問題となった牛肉から最高約3500ベクレルが検出されたということであろう。
(追記:後に、最高約4500ベクレル/kgが検出されたとの報道あり)

ちなみにこの3500ベクレル/kgの牛肉を100g人間が食べたら、どの程度の被爆になるかご存知であろうか? 

たった0.005ミリシーベルトである。
(追記:4500ベクレルとすると0.006ミリシーベルトになる)

これは東京からニューヨークへ飛行機で片道飛んだだけであびる被爆量の0.1ミリシーベルトの20分の1にあたる。

もし毎日この牛肉を食べ続けたとしても、年間たった1.8ミリシーベルトで、年間自然被爆放射線量とほぼかわらない程度の被爆量である。

食品安全委員会のホームページに今回の原発事故関連の飲食物放射能汚染情報が常時更新されているので、そちらを参照されたい
http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/emerg_genshiro_20110316.pdf

もともと我々人体の中にも放射性物質が常時存在するのをご存知であろうか?
必須ミネラルのカリウムの中には放射性カリウム40が含まれ、我々の体内に常に3000~4000ベクレルの放射性カリウムが存在するという。

今回みつかった牛肉1kg分の放射性物質は常にわれわれの体内にあるのだ。
本当にそんな少ない量の放射性物質が健康に悪影響を及ぼすのか?

ウォールストリートジャーナルJapanのHPより:
http://jp.wsj.com/Japan/node_272246

原発事故調査・検証委員を務める放射線医学総合研究所の研究員、柿沼志津子氏はウォール・ストリート・ジャーナルの取材に対し、今回検出された水準は1年間毎日大量に摂取し続けた場合に健康上の懸念が生じる程度だと指摘し、日本の食事スタイルでは問題になる可能性が低いと述べた。1度や2度食べてもあまり影響はないという。

6月26日に東京大学農学部フードサイエンス棟で開催された「食の安全と安心フォーラムシリーズ第3回」で山崎が発表した内容の概略を本ブログに掲載しているので、今回みつかった程度の放射能汚染に関して健康への悪影響は全く心配ないということをご理解いただきたい:
⇒ 詳細はこちら


牛肉をはじめ、スポットでの流通食品の放射能検査はモニタリングという意味で必要であろう。
しかし国民の税金をつかっての全頭検査は全く不要である。

BSEのときと同じ過ちをおかすことになってもよいのだろうか?
結局、まったくBSEなど発症しなかったのに、甚大な額の税金が投入されて、
科学的に全く無意味な「安心」がもたらされただけだったように思う。

本当に牛肉の安全性に問題が生じる可能性が出てきたら、そのときに再度検討するべきと考える。
やはり現在の暫定規制値があまりにも厳しすぎるのではないか?
放射性セシウムであれば、20倍程度の10,000ベクレル/kg を越えたら、市場に出回らないようにするくらいで十分と考えるのは、自分だけであろうか?

追記(2011.7.15.):
7/15のニュースでは福島県淺川町農家の稲わらで高濃度の放射性セシウムが検出されたとして、その稲わらを餌として供していた肉牛42頭が出荷されたという。こちらも、実際出荷された牛肉の放射性セシウム濃度が判明しておらず、そちらの追跡調査の結果が待たれるところである。ただ、こちらも上記のとおり、実際の人体の被爆量に換算するときわめて低くなることが予測されることから、冷静な対応が必要であろう。


K

2011年7月2日土曜日

ウコン自体は肝臓によいのに・・肝炎の方に悪いのは鉄分です【ためしてガッテン6/29】

6月29日に放映されたNHKの人気番組「ためしてガッテン」で、
ウコンのサプリメントを常用していた肝炎患者さんが、
むしろ肝炎の症状が悪化したとの内容を報告されていましたが・・

NHK『ためしてガッテン』ホームページ
http://www9.nhk.or.jp/gatten/archives/P20110629.html

残念なのは、そのC型肝炎の患者さんにとって悪かったのは、
ウコン自体ではなく、たまたま常用されていたウコンのサプリメントに
過剰に含まれいた鉄分のせいであったということです。

アキウコンには鉄分が過剰に含まれるケースがあるので、
ウコンの配合された健康食品でも鉄分含量に大きな差があり、
鉄分量が商品に表示していないので要注意との報道でした。

栄養士の先生も登場されての警告で、
それにガッテンした出演者の芸能人の方々という構図は、
一般視聴者に大きなインパクトがあります。

ウコン配合商品を製造されているメーカー各社は
翌日からお客様からの問い合わせ対応に追われたものと思いますが、
さすが大手のハウス食品さんなどは、放映翌日の午前中には、早速ホームページで
同社ウコン製品の鉄分含量の分析値をすぐに公開されております:
http://housefoods.jp/company/info/info2973.html

今回の報道に対して一般市民はどう対応するべきでしょうか?

1.ウコン自体は肝臓によい生薬なので、肝臓が気になる方は飲んでも問題ない。

2.ただし、肝炎患者の方はお医者様にご相談の上、ハウス食品さんのように鉄分含量が6mg以下であることがはっきりわかっているメーカーの製品を選ぶ。

3.肝炎患者でない方は、むしろ鉄分補給が必要なので、本件を心配する必要はなく、お酒をのまれるときにウコン製品をとられても全く問題ない。

以上を肝に銘じて、こういった食の安全情報を正しくご理解いただくことが、まさに「肝心」ですね。


K

2011年6月30日木曜日

お茶の放射能汚染は心配無用!

6月26日(日)に東京大学農学部フードサイエンス棟で開催されました
「食の安全と安心フォーラム シリーズ第3回」で、
当NPO理事長の山崎が話しました内容を少しご紹介いたします。

講演タイトル:「食品の放射能汚染による健康影響のエビデンス」

日本は世界で唯一の核被爆国である。
それでなくとも放射線に対して恐怖感をいだいている市民は多かったことが察せられる。
本年3月11日に発生した東北大震災による福島原発事故がそれに追い討ちをかける形となり、原発から漏出し続ける放射性物質が人々の不安をさらに助長することとなった。

原発事故後、食品を介した放射性物質の健康への影響については、3月17日から厚生労働省が食品衛生法に基づいて原子力安全委員会の定める指標値を暫定的な規制値とし、続いて食品の出荷制限・摂取制限を各都道府県に通知した。
その後、内閣府食品安全委員会で数回の専門委員会を開き、当面この暫定規制値のまま流通を管理することで同意したが、以下の委員長声明および緊急とりまとめ(抜粋)が規制値のあいまいさを物語っている:

「今回の緊急とりまとめは、かなり安全側に立ったものであり、現在行われている管理措置は、安全性を厳しすぎるくらい見込んだものを踏まえているわけです。したがって、市場に出回っている野菜、魚介類等の安全性は十分に確保されるようになっています。議論に携わった専門家からは、水や野菜を十分摂取しないことによる脱水、発がん等の新たなリスクの発生を危惧する意見も出されました」、

「今回は緊急的なとりまめを行ったものであり、今後諮問を受けた内容範囲について継続し食品健康影響評価を行う必要がある」

すなわち、食品安全委員会は今回、可能な限り科学的知見に関する情報を海外からも収集・分析して検討した、としているが、実際は食品の放射性物質汚染による健康影響のヒトでのエビデンスはほとんどなかったというのが事実であり、放射線医学の専門家たちが認めている唯一の疫学データは、チェルノブイリ近郊における放射能汚染された原乳により乳幼児での非致死性甲状腺がんの発症が増えたと疑われるケースのみであった(このデータまでも見かけ上のがん発生率上昇の可能性ありとの見解もある)。

疫学調査で重大な危険性がみつからなかったのに、食品の放射性セシウム濃度の数値が公表されるたびに怯える消費者は「フード・インフォマフィラキシー(食品情報過敏症)」と呼ぶことができるが、その原因の多くは間違った科学情報を発信する側にあると言える。

われわれのカラダの中には常に必須ミネラルとしてのカリウムが100gくらい存在し、そのうちわずかではあるが放射性カリウム40があるとのこと。われわれの体内には常に約3000~4000ベクレルの放射性物質があるというのだ

本当に出荷制限されたお茶やホウレンソウの600ベクレル/kgが人体への悪影響があるとは、とても思えない。 これらの飲食物がむしろメタボやがんなどの生活習慣病の予防によいのに、放射能を怖がるあまり摂取しないとしたら、むしろそちらの悪影響のほうが大きいであろう。

低レベルの自然放射線(年間10mSV強)を浴びている中国の高地に住む人々はがんの発生率が低いらしい。ラジウム温泉とか、放射線はむしろ健康によい話も多い。

大阪大学名誉教授の近藤宗平先生は、著書『人は放射線になぜ弱いか~少しの放射線は心配無用~講談社BB刊』の中で、「放射線はどんなに微量でも毒」というそれまでの定説を科学的に反証した研究者である。

The Dose Makes Poison.
(毒か安全かは量で決まる)
 ~パラケルスス(1533)~

原爆放射線で胎内被曝した子供の「重い精神発達遅れ」の発症を調査した研究で、20ラド(200mSV)以下の被爆では無害であったという。
ところが、チェルノブイリの原発事故では、これよりはるかに微量の被爆だったが、医師その他の勧告により数万の妊娠中絶が事故直後の欧州で行われた。

多くの市民を救うつもりで発信された誤った科学情報が、実際は誰ひとり救ってはおらず、むしろ生まれくる新たな生命や農家の方々の生きる希望を奪っていないか、情報発信者は熟考すべきだ。

広島・長崎の悲惨さを経験した我々日本人は、大量の放射線が人体に与える甚大な影響を知っている。しかし、年間放射線量として100mSV(ミリシーベルト)以下の低レベル放射線に長期被爆しても、人間の遺伝子/細胞は修復する力を持つと信じている。

安全をかなり厳しく見込んだいまの暫定規制値の高いハードルを越えた市場の飲食物は、もちろん安全すぎるくらい安全であるが、出荷制限を受けた青物野菜、お茶、魚介類も、実際は全く健康に悪影響のない飲食物であるということもご理解いただくと、あなたの「フード・インフォマフィラキシー」が治ったということだろう。


ものを怖がらな過ぎたり、怖がり過ぎたりするのはやさしいが、
正当に怖がることはなかなかむつかしい。  ~寺田寅彦~



K

2011年3月26日土曜日

飲食物の放射能汚染による健康影響は?

一昨日、千葉県水道局が松戸市内の2浄水場の水から、
乳児の飲用基準(1リットル当たり100ベクレル)を超える
放射性ヨウ素が検出されたと発表したことにより、
自分の住む町の水道水もついに乳児の飲用を控える対象として指定されました。

当然のことながら、町のスーパーでは清涼飲料水が売り切れ、
イトーヨーカ堂でも2Lのミネラルウォーターは母子手帳を提示した母親に
優先して販売されることになったようです。

自分が恐れていた流通のパニックがさらに助長されているように感じます。
TVでは相変わらずACのコマーシャルで、「買占めは止めよう」と訴えていますが、
そんなことを言っている場合ではない、というのが一般消費者の心理でしょう。

日本小児科学会など小児関連の3学会は25日、
「現在検出されている程度の値なら、短期間の摂取であれば、
乳児であっても健康に影響を及ぼす可能性は極めて低い。
乳児は、大人よりも体内の水分量が多いため、水分不足は健康に重大な影響を及ぼす」
として、代わりの飲料水が確保できなくても「水分摂取を優先させる」との見解を出した(読売新聞)。

放射能を恐れるあまり、水分を取らないことのほうが、
はるかに乳幼児の健康に影響を与えるということですね。

21日の自分のブログでも同じようなことを書きましたが、
いまのような非常事態において飲食物の流通を制限することは、
まさにこのような「本末転倒」を招くリスクがあると思います。

行政のリスクコミュニケーション手法に問題ありと強く感じる部分であり、
「飲食物の放射能汚染に関する暫定規制値」の見直しをすべきと
自分は主張したところです。⇒詳細はこちら

実際、内閣府の食品安全委員会ではその暫定規制値について再評価中で、
昨日25日も、「食品衛生法に基づき放射性物質について指標値を定めること」
に関する食品健康影響評価について議論されたようです:
http://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20110325sfc

その会議資料のなかで、過去の国際機関などの評価結果をみても、
実際に飲食物への放射性物質汚染による健康評価の報告はなく、
あくまで放射線等量(いわゆる人体への放射線量:シーベルトであらわす)による
原発事故など非常事態の際の介入値の案が示されているのみのようです。

この「国際機関等の評価等について」という資料の中には、興味深いコメントがあります
(ICRPのPublication63-1992より抜粋):
「代替食品が得られない状況、あるいは住民集団が重大な混乱に陥りそうな状況では、
1年につき10ミリシーベルトよりもはるかに高い予測線量でのみ介入は正当化されるかもしれない。」

すなわち、現在設定されている飲食物の放射能汚染の規制値も、
いまのような市民がパニックに陥りそうな市場環境では
もっと高い数値に上方修正すべきではないかと解釈できるのではないでしょうか?

今回、厚生労働省が緊急に設定した飲食物中の放射能の暫定規制値も
原子力安全委員会が過去の国際機関の介入値を参考にして、
当該核種(ヨウ素131および放射性セシウム)の1年間の継続的な摂取から
予測される放射線等量が健康影響を及ぼす可能性のある数値(50mSv)から
算出された放射能の規制値として設定されたようです。

原子力安全委員会の考察した内容は非常に難解であるものの、
いろいろな条件が2つ3つ重なって、最悪の場合、
がんになる確率が0.5%あがると解釈できます。

放射能汚染されたホウレンソウを毎日洗わずゆでもせず、1年間食べ続ける人がいるのでしょうか?
しかもそれでがんの発症確率が0.5%増えるだけということです。

確かに飲料水や原乳の場合は、毎日摂取する可能性が高いので、
1年間とか長きにわたっての放射能汚染はいやな感じがしますが、
これらについても高濃度に放射能汚染されたものばかりを継続的に摂取するのでなければ、
規制値を算出する際に予測されたような放射線量にはならないと思われます。

だからこそ、枝野官房長官の記者会見では、いつもお決まりのように
「ただちに健康影響が出る放射線量ではない」とのコメントが出てきますが、
実際その放射線量の水をどのくらい飲んだら健康影響が出るのかについて
全く説明がないため、市民の不安を煽ってしまう結果となっています。

確かに説明はできないはずです。
そんな調査結果は過去にないので、あくまで最悪の予測から算出された
念のための安全規制値だからです。

昨日の朝のNHKニュースに、原子力安全委員会の元理事の先生が
出て説明しておられましたが、チェルノブイリの原発事故のときでも、
実際長期的な被爆による健康影響が出たのは
乳幼児のみだったので、大人は全く気にする必要はないですよ、
とのコメントがありました。


★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

【東京大学医学部付属病院放射線科の中川恵一先生のツイッターコメントより抜粋】:

乳幼児の被ばくに関して。甲状腺に関しては、内部被ばくによって、
乳幼児に発がんが増えたというデータがあります。
外部被ばくに関しては、特に大人との違いは見られません。

チェルノブイリの原発事故で、唯一増えたがんは、小児の甲状腺がんでした。
内部被曝については、小児に影響が出やすい可能性があります。
チェルノブイリ事故とちがい、今回の原発事故に近い、
スリーマイル島原発事故では、小児の発がんリスクの上昇は見られませんでした。

200mSv(ミリシーベルト)つまり200,000μSv(20万マイクロシーベルト)が
医学の検査でわかる最も少ない放射線の量と言われています。

症状が出るのは、1,000mSvすなわち1,000,000μSv(百万マイクロシーベルト)からです。
極端な例ですが、全身に4,000,000μSv(4百万マイクロシーベルト)あびると、
60日後に50%の確率で亡くなります。

もっと低い放射線量では、症状もなく、検査でも分かりませんが、発がんのリスクは若干上がります。
ただし、およそ100mSv(ミリシーベルト)の蓄積以上でなければ発がんのリスクも上がりません。

危険が高まると言っても、100mSvの蓄積で、0.5%程度です。
そもそも、日本は世界一のがん大国で、2人に1人が、がんになります。
つまり、50%の危険が、100mSvあびると50.5%になるわけです。

タバコを吸う方がよほど危険です。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

これらの情報から判断すると、自分が政府のリスク管理者であったなら、
放射能汚染の農産物を出荷停止にする前に、タバコを販売禁止にしますね。
それを考えると、JTが震災の影響で、30日から12日間
一部の銘柄のタバコを出荷できないそうですが、本当に皮肉な話です。

自分はやはり、現在の飲食物の放射能暫定規制値は
いまの非常事態を加味して総合的に考えたときに、
低すぎると考えます。

乳幼児においては、確かに長期間の摂取は要注意といいながらも、
過度な摂取制限をすることの健康への悪影響の方がむしろ危険なことを考えると
母親が過敏に反応してしまうような飲食物の出荷制限はすべきでないと思います。

放射線による健康影響については、さらに勉強していきたいと思いますが、
もし小職のブログに対してご不明な点や反論のある方は、
ぜひご教示いただきますと幸甚に存じます。

よろしくお願いいたします。

2011年3月21日月曜日

福島や茨城の農産物の安全性にいまだ問題なし。

今回の東北関東大震災で亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、
被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。

昨日さかんに報道されておりましたのが、福島原発事故にともなう食品の放射能汚染の問題でした:
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110319-00000568-san-pol
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110320-00000627-yom-soci

枝野官房長官の声明で、福島県産の牛乳と茨城県産のホウレンソウから、食品衛生法上の暫定基準値を超える放射線量が検出されたが、「健康に影響を及ぼす数値ではなく、冷静な対応をお願いしたい」と述べられました。

今回検出された放射性物質濃度の牛乳を、仮に日本人の平均摂取量で1年間摂取し続けた場合の被曝線量は、CTスキャン1回程度のものである。ホウレンソウについても、やはり日本人の年平均摂取量で1年間接種したとして、CTスキャンと1回分の、さらに5分の1程度である、という。

内閣府食品安全委員会のホームページにわかりやすいQ&Aがあるので、ご参照ください:
http://www.fsc.go.jp/sonota/emerg/emerg_genshiro_20110316.pdf

ただ、今回厚生労働省が食品の安全性に関して決定した食品衛生法の暫定規制値(放射性ヨウ素とセシウム)は値が低すぎるような印象があります。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e.html

一般消費者はそれでもなくとも、現在放射能に関して過敏な状況にありますので、
食品衛生法の基準値を超えたので出荷停止と言われると、
福島県産の乳製品全般や茨城県産の野菜全般への風評被害が非常に心配されます。
すでに栃木、群馬、千葉でも同様の放射能汚染が報道され始めましたが、
このままでは明らかに安全な食品が福島原発事故の煽りを受けて、風評被害にあいそうです。

このような状況において最も大切なのは、
政府やメディアのリスクコミュニケーションが適切かどうかということではないかと考えます。

この「食品衛生法上の暫定規制値」というのは、どういった根拠をもとに設定された基準値なのか、
それをわかりやすく説明する必要があるのではないでしょうか?
しかも「暫定」という限りは、変更される可能性があるということでは?

今回厚生労働省が決定した「食品衛生法上の暫定規制値」は
内閣府原子力安全委員会が報告した「原子力施設の防災対策について」
という指針の中にある基準値とのことですが、その根拠はわかりません:
http://www.nsc.go.jp/shinsashishin/pdf/history/59-15.pdf

少なくともこのままでは、明らかに健康影響のない食物までが、
市場に出ていかないばかりでなく、出荷停止になった地域の農産物全体が
風評被害をこうむることになるでしょう。
枝野官房長官がいくら「冷静な対応を」と叫ばれても、
乳幼児をかかえる母親たちにとっては、全く聞く耳をもってもらえないように思います。

私は、このような消費者を「フード・インフォマフィラキシー(食品情報過敏症)」と呼んでいますが、
実はこの問題はむしろ情報を発信する側にあるケースが多く、
リスクコミュニケーションの手法が改善されることで治る可能性があると考えています。

今回の食品の放射能汚染の問題についても、
行政がリスク評価+リスクコミュニケーションをどう管理していくかによって
風評被害を最小限におさえることができるのではないでしょうか?

まずは、内閣府の食品安全委員会でリスク評価をされることで、
厚生労働省もこの「暫定規制値」を上方修正することができるのであれば、
一刻も早く食品安全委員会でのリスク評価をお願いしたいと思います。

非常事態の日本で本当にいま考えないといけない人体への健康影響は
放射能汚染の食品を流通規制することではなく、
むしろ早く食品の流通を平常な状態に復帰させることだと思います。

法律や規制がそのまま適用できるのは、通常の社会環境にあるときの話であり、
原発がいまのような状況は明らかに社会全体が非常事態です。
行政には非常事態仕様の規制を検討していただきたいと思います。

本当に大切な国民の生命と健康と食について、
最善の策を検討すべきと考えます。


K

2011年2月8日火曜日

NPO法人登記が完了しました!

本年2月2日に東京法務局にNPO法人の登記申請を行い、
2月7日までに不備の連絡がまいりませんでしたので、
これをもって登記が完了したことになります。

すなわち、当NPO法人が内閣府の認証を受けて
2011年2月2日に正式に設立されたということです。
正式な商号は、「特定非営利活動法人食の安全と安心を科学する会」です。

今後、内閣府への登記完了報告書の提出、
税務署や労働局への登録、銀行口座の開設と続けてまいりますが、
同時進行で、季刊誌やメルマガの創刊、
設立総会、座談会、シンポジウムなどの開催を進めてまいります。

当NPO法人のミッションにご賛同いただける方で、
企業からの賛助会員、個人からの正会員を希望される方を
募集しております。

今後ともご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

理事長 
山崎 毅